困ってません?

 薬を取りに来るのがだんだん早くなってきた半年くらい前にご主人を亡くされた一人暮らしのおばあちゃま。

 「この前いらしたばかりたから、まだ家にお薬があるはずですよ。」

 「ないわよ。ちゃんと飲んでるんだから。2日早いだけでしょ!」(…とご立腹。実は20日も早いし、ここ半年くらいこれを繰り返していて…)

 「お薬をたくさん飲んでしまっているとか、ご自分で管理出来ないなら、訪問看護師さんやヘルパーさんを雇いましょうか?」

 「じゃあ、今度は1ヶ月して来れば良いんでしょ。私はしっかりしてるし、困ってないわよ!」

 「いや、しっかりしてなさそうだら申し上げているのですけど…。なんか困ってたら相談して下さい。」

 「そうなのよ、困ってるのよ。主人の亡霊が毎日出てきて…。」

 「困ってないんじゃなかったっけ?」

 「困ってないわよ、ちゃんとしてますから!」

 「とりあえず、今日はお薬を出しますけど、今度は8月までもつはずですから、帰ったらよく探してみて下さいね。そして、何か困ったら相談してね。」

 「そうなのよ、困ってるのよ。」

 「困ってないんじゃないの?」

 「そうよ、私はしっかりしてるし、大丈夫。」

 「じゃあ、何か困ったら相談してね。」

 「そうなのよ、困ってるのよ。」

 「これから先、物忘れとか、認知症の可能性が出てくるといけないから、一度調べてみますか?」

 「は?何言ってるの!私は、しっかりしてるし、何も困ってないし、認知症のわけないでしょっ!」

 「じゃあ、何か困ったらおっしゃって…」
 
 「そう、困ってるのよ。」

 「他の方が大勢待っていらっしゃるので、ここまでにしましょうか…。」

 認知症のご主人を長い間介護されてきた方が、ご主人を亡くされて気が張っていた状態から解き放たれて一人になったりすると、急激に認知症が進んでしまうことがあります。

 認知症を疑って、言葉を選んで認知症の検査をお勧めして、「ぜひやってみたいです!」と協力的な方は大丈夫、「なに言ってんのっ!私は認知症なんかじゃないわよっ!」とご立腹される方はだいたい認知症の疑いありです。

 女性は特に、家に他人を入れたがらないので、こういった方のようにどんどん進行してしまいがち。

 なんとか外に出て人と触れあうよう仕向けたいのですけど…。認知症の方がどんどん増えていく昨今、内科の外来はいろいろと大変です。